フェアプレーが相次いだ今夏の甲子園大会。優勝を逃した星稜(石川)を追いかける中でも、ほほえましいシーンが多かった。
智弁和歌山戦で足をつったエース奥川恭伸投手(3年)に、相手主将の黒川史陽内野手(3年)が攻守交代時に漢方の錠剤を渡したことが話題になった。仙台育英(宮城)戦では同じく投球中に足をつった荻原吟哉投手(2年)の元に相手4番の小濃塁外野手(3年)が駆けつけ、スポーツドリンクを飲ませた。
林和成監督(44)は「野球っていいなあ」とベンチで見つめていたという。林監督の指導理念は「野球の素晴らしさを伝えたい」。監督冥利(みょうり)に尽きる瞬間だった。
この機会に星稜名物を紹介したい。自校に練習試合に来てくれた相手を全員で見送る。相手校のバスはグラウンドを出て5分ほどで目の前の高速道路に乗る。丘の上のグラウンドの端から、高速を走るバスが見える。部員全員で並んで待ち構え「ありがとう」を表現するウエーブ。20年以上続く伝統だ。相手校はバスの中で手を振って応えている。星稜側からはほとんど見えないが、ナインは満開の笑顔でバスが見えなくなるまで手を振り続ける。
フェアプレーがこれだけ取りざたされた年はないかもしれない。きっかけを作ったのはほかならぬ林監督だろう。今春センバツで相手のサイン盗みを疑い、試合後に敵将の元に直接抗議にいく暴挙。大きく報道されたことで、高校球界のみならず日本球界でフェアプレーの意識が高まったのは間違いない。
花咲徳栄(埼玉)の菅原謙伸捕手(3年)が明石商(兵庫)戦で「自分のよけ方が悪かった」と死球を自ら“辞退”したプレーが称賛を受けた。後世に語り継ぎたい光景だった。相手のプレーに拍手を送る高岡商(富山)や、相手への敬意でガッツポーズを一切しない富島(宮崎)のようなチームもやってきた。決勝戦でも履正社(大阪)の主将、野口海音捕手(3年)が走者に出た際、送球の邪魔にならないように腰をかがめ、遊撃手とアイコンタクトする場面があった。
令和最初の甲子園。勝利を追い求めながら、勝利にも勝る価値があることを表現した球児がいた。次の100年への第1歩になる101回大会は、新たな高校野球像を示した大会になった。そう思いたい。【柏原誠】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)
- このコラムにはバックナンバーがあります。
https://www.nikkansports.com/baseball/column/techo/news/201908220001291.html
2019-08-22 21:08:00Z
CBMiTGh0dHBzOi8vd3d3Lm5pa2thbnNwb3J0cy5jb20vYmFzZWJhbGwvY29sdW1uL3RlY2hvL25ld3MvMjAxOTA4MjIwMDAxMjkxLmh0bWzSAQA
Tidak ada komentar:
Posting Komentar