サッカーJ1湘南の曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(50)が、所属選手やスタッフに暴言などのパワーハラスメント(パワハラ)を行っていた疑いがあることが11日、分かった。Jリーグは被害者や目撃者、関係者らから報告を受けており、今月中にもクラブや本人から事情を聞く方針を固めたもようだ。チョウ監督はこの日のJ1第22節でも指揮を執り、チームは磐田に3―2と逆転勝ちした。
Jリーグは曹監督からのパワハラ行為を訴える複数の当事者、目撃者の声を受け、事実関係の調査を始める。今月中にも同監督やクラブ側へのヒアリング調査を行うとみられる。
複数の関係者によると、曹監督は少なくとも2018年2月~今年7月までの間、神奈川・平塚市内のクラブハウスや試合会場などで選手やチームスタッフらに、高圧的な態度や暴言を繰り返した疑いがある。
同監督は、複数人の前でチーム関係者の能力を疑問視したように「どれだけ無能なんだ」「お前はウソつきだ」などと人格を否定するような発言を行った。また机をたたいたり、扇風機を蹴りながら選手に罵声を浴びせる行為が日常的にあった、とされる。
精神的な苦痛や過度のプレッシャーから練習場に行けず、うつ病などを発症した関係者もいたという。クラブ親会社の「ライザップ」関係者によると、同社から今年1月に出向したスタッフは精神的に追い込まれ、6月からチームを離れたという。クラブの幹部は取材に「現地点で調査が入るという情報は聞いていない」、広報責任者は「クラブ内で問題にしているようなことは全くありません」と話した。
2012年に厚生労働省が定義したパワハラの概念は〈1〉優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること〈2〉業務の適正な範囲を超えて行われること〈3〉身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること―の3基準を満たす行為としている。Jリーグは同監督の行為が該当するかどうか、慎重に調査を進める。
日本サッカー協会は2013年に暴力根絶相談窓口を設置するなど、暴力・暴言の根絶に向けた対策を進めてきた。今年5月にはスポーツ界でパワハラなどが相次いだことを受け、新たに指導者の懲罰基準を定めている。Jリーグの広報担当者は「何も話せません」とした。
曹監督は12年に湘南の監督に就任し8季目。「湘南スタイル」と呼ばれる運動量を武器とした躍動感あふれるスタイルで、昨季はルヴァン杯のタイトルを獲得した。
◆スポーツ界の主なパワハラ騒動
▽サッカー 15年8月、J2熊本の監督がスタッフの顔を水たまりに近づけさせ、背中を踏みつけるなどの行為
▽レスリング 18年1月、女子で五輪4連覇の伊調馨と、コーチだった田南部力氏が日本協会の栄和人強化本部長からパワハラを繰り返し受けたとする告発状が内閣府に出された
▽バスケットボール 19年8月、男子Bリーグ2部の香川で監督が選手に対する跳び蹴り、平手打ちなど計3件の暴力や暴言
▽野球 6月30日のDeNA戦(横浜)の試合後、広島の緒方孝市監督が、走塁で全力疾走を怠った野間峻祥外野手を平手で複数回叩いていたと球団が7月24日に発表。同15日付で厳重注意処分とされた。
◆曹 貴裁(チョウ・キジェ)1969年1月16日、京都府生まれ。50歳。洛北高から早大を経て、91年に柏の前身である日立製作所に入団。JリーグではDFとして柏―浦和―神戸でプレーし、97年に引退。2000年に川崎アシスタントコーチ、04年にC大阪ヘッドコーチを経て05年から湘南へ。ジュニアユース監督、ユース監督、ヘッドコーチを歴任して12年に監督に就任し、今季は8季目。
https://hochi.news/articles/20190812-OHT1T50028.html
2019-08-11 16:45:00Z
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