百戦錬磨のマエストロにとっても、両チーム合わせて9人連続失敗というPK戦は記憶になかったようだ。ヴィッセル神戸のMFアンドレス・イニエスタは「サッカーファンにとっては面白い試合になったと思う。両チームがたくさんチャンスをつくり、両チームに勝つチャンスがあった」と90分間で3-3と点を取り合った試合を振り返り、「PK戦は少しクレイジーな展開になったが、自分たちの勝利で終えられて喜んでいる」と笑みを浮かべた。
3-3のまま90分間を終え、延長戦なしのPK戦に突入すると、後攻の神戸はイニエスタが1人目のキッカーを務め、落ち着いてGKの逆を突いてゴール左に決めた。2人目までは互いに全員が成功。ところが、ここからまさかの展開が待っていた。
先攻の横浜FMはFWエジガル・ジュニオがGK飯倉大樹に止められ、後攻の神戸はFW小川慶治朗が左ポストに当ててしまう。4人目は横浜FMのMF水沼宏太がゴール上に外し、神戸のDF西大伍はGK朴一圭に止められた。5人目は横浜FMのDF松原健がクロスバーに当て、神戸のDF大崎玲央のキックはゴール上へ。さらに6人目、横浜FMのMF和田拓也は飯倉に止められ、神戸のDFトーマス・フェルマーレンはゴール上に外した。
迎えた7人目、先攻の横浜FMはFW遠藤渓太がクロスバーに当ててしまい、5人連続の失敗。両チーム合わせて9人連続失敗となった。最後は神戸のMF山口蛍がゴール右に決めて激闘に終止符を打ったが、イニエスタは「PKは博打みたいなところがある。どうなるか分からない」と指摘したうえで、「自分は1人目で決めて、ホッとした中で見ていた。クレイジーな展開になったが、マリノスの選手が外す中、自分たちは決められて良かった」と苦笑いで振り返った。
元日の天皇杯決勝まで戦い、束の間のオフを挟んで早くも新シーズンが始まった。チーム全体として後半は運動量が落ち、横浜FMに押し込まれる時間が続いたが、飯倉の好セーブもあり、最後はPK戦とはいえ、昨季のリーグ王者に競り勝った。
「シーズンの最初はコンディションを上げるのが難しい。目の前にマリノスという素晴らしいチームがいて、難しい試合を余儀なくされたが、個人としてもチームとしても良いパフォーマンスを見せられたと思う」
前半27分には絶妙なスルーパスでFWドウグラスの先制点をアシストしたイニエスタ。中3日の12日にはACL初戦のジョホール・ダルル・タクジム戦(ノエスタ)を控えるが、「しっかりケアして、自分のベストなプレーを見せられるようにしたい。素晴らしいシーズンにできると思っているし、目の前の挑戦に向き合い、一戦一戦自分たちの力を試していきたい」と意気込んだ。
(取材・文 西山紘平)
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2020-02-08 08:48:00Z
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