その一方で、パワーユニットの開発のみでなく、ドライバー育成など将来を見据えた取り組みも強化している。「Hondaヤングドライバーズプログラム」もその一つだ。
松下信治は、2017年にFIA-F2選手権でランキング6位を獲得し、翌年は日本でスーパーフォーミュラに参戦。今季はF2の舞台に復帰し、Carlinに所属している。2年ぶりのF2となる松下の目には、前回の参戦からどのような変化が見えているか。
「チームが変わりました(笑)。昨年のスーパーフォーミュラではDOCOMO TEAM DANDELION RACINGから参戦していましたが、全ラップでプッシュできていましたし、マシンもハイダウンフォースで、F2と比べてマシンもドライビングも大きく異なります。タイヤのデグラデーション(性能劣化)もあるので、タイヤの持たせ方などを少し学びましたが、そこではF2での経験が活きていました」
「今季は幸運にもF2のシートを手に入れることができました。僕はF1ドライバーになることが目標ですし、それはホンダのドライバー全員にとっても大きな夢です。僕やF3のドライバーが、こうしてF1の併催レースで走ることで、関係者に見てもらえる機会が増えることはいいことだと思っています」
「僕自身はドライバーとしてバランスがよくなったと思います。経験が増えたことで、17年と比べると、より頭を使うようになっていますし、いろいろなことを自分のコントロール下に置けるようになっています。どこで抑えて、どこでプッシュするか、オーバーテイクはどうするかといった判断も、以前より成長していると思います。ただ、現時点でまだ思うような結果を残せていないことは残念です。シーズンは長いですし、チャンピオンシップ全体を見据えて、チームとともにどこでポイントを重ねられるかを分析していくつもりです」
F2へ復帰するために、松下信治は相当な努力を重ねてきました。もちろん、その先にはホンダのF1ドライバーになるという目標がある。
「ここがF1に近い場所であるということは明らかです。F1と同じコースで、タイヤも同じピレリ製ですからね。だから、ホンダにはチャンスがあるならF2へ戻りたいと訴え続けてきました。ホンダの内部でも話し合ってくれて、正式に復帰が決まったんです。僕や他の日本人ドライバーに期待してくれたことが本当にうれしいですし、その想いに応えなければいけません」
ここまで、苦戦が続く松下信治だが、アゼルバイジャン・バクーではポールポジションを獲得。しかし、カーリンがレースペースに課題を抱えていることもあり、レースでの最高位はバーレーンでの9位にとどまっている。
「もちろん、チャンピオンを目指していますし、達成可能な目標だと思っています。これまで、バーレーンでは苦戦しましたし、バクーとスペインではトラブルも起きましたが、常に改善点を見つけようと取り組んでいます。それをもっと強化していくことが、今の僕にできることです」
パフォーマンス面はもちろんだが、松下自身はレースへのアプローチについても以前と比べて変化を感じているようだ。今は、マシンの中で、しっかりと自分自身を制御できていると語る。
「レースでは前よりもアグレッシブになりました。毎回、安定したスタートを決められているし、感情のコントロールもしっかりとできています。以前よりもメンタルが成長して、より冷静になったと思います。16年のバクーで受けたペナルティー(セーフティカー明けの再スタート時に混乱を招く走りがあったとして、次戦の出場停止処分を受けた)の話をされることもありますが、あのとき僕は一種のパニック状態で自分をきちんとコントロールできていませんでした。あのときそれに気づいて、そこから成長するために懸命に努力し、冷静さを保つように努めてきました」
成熟した大人のドライバーとして、F2に戻ってきた松下信治。昨年のF2でランキングトップ3に入ったドライバーは、今季3人ともF1へステップアップを果たしている。松下自身も夢に近づいている実感は持っているが、気を緩めずにさらなる向上に取り組んでいくつもりだと語る。
「F1が少し近づいたことは事実ですが、当然、結果を出さなければいけません。ホンダからはF1に乗れるスーパーライセンスの獲得以外に具体的な目標は設定されていませんが、まずは自分の仕事をしっかりと果たすことが必要です。それなくして目標は果たせませんし、2年前と同様に集中して取り組んでいくのみです。F2でいい結果を残していけば、チャンスが見えてくると思います。気にならないわけではありませんが、あまりF1のことを考えすぎないようにしていきます」
カテゴリー: ホンダF1
https://f1-gate.com/honda/f1_49585.html
2019-05-30 08:10:22Z
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