ヤクルトは来季の新監督に高津臣吾2軍監督(50)の就任を発表。10月1日に東京都内で記者会見を行った。
高津新監督は現役時代に日米だけではなく、韓国、台湾、BCリーグでもプレー。韓国KBOリーグの選手経験者では初のNPBの監督となった。
11年前、韓国で圧倒的な存在感を発揮
日本を代表するクローザーとしてメジャーリーグへ。そしてヤクルトに復帰後、再び渡米して所属先を探していた2008年のシーズン。高津は6月に韓国に渡り、その年に誕生したウリヒーローズ(現キウムヒーローズ)に入団した。高津が39歳の時だ。
その年のヒーローズは勝率3割台。勝ちパターンで登場する高津がマウンドに上がる機会は少なく、加えて夏場には北京オリンピック期間中のシーズン中断を含めた、丸一か月登板がなかった。
そんな中でも高津は圧倒的な存在感を見せた。18試合に登板し1勝8セーブ、21回を投げて失点2。防御率0.86の好成績でシーズンを終えた。しかしヒーローズは公式戦終了後、当時2人までだった外国人枠を野手に充てるため、高津はその年限りで韓国を離れた。
高津が韓国でプレーしたのは5か月弱。しかし当時の同僚にはその月日以上に高津との思い出が濃く残っている。
元同僚が語る「高津さんは尊敬できる人」
2008年に先発、中継ぎで起用され、シーズン後半の先発での2勝はいずれも高津へリレーだったファン・ドゥソン現サムスンライオンズコーチ(42)は、高津についてこう話す。
「スーパースターなのにあの年齢で韓国まで来てプレーするということに尊敬した。一緒に焼酎を飲みながら色んな話をした。“野球をやるのが楽しい”と言っていたのが忘れられない」
ファン・ドゥソンに高津がヤクルトの監督になるという話をすると、「日本の記事を見たけど全然驚かなかった。だっていつかは監督になる人だと思っていたから」と太い声をより強めて答えた。
またヒーローズで強いカリスマ性を発揮した元内野手で現在はKTウィズで団長(日本におけるGM)を務めるイ・スンヨン(47)は高津によって野球観が変わったと話した。
「抑え投手と言えば力で打者を圧倒するものだと思っていたが、高津さんのような技巧派の抑えが活躍する姿に衝撃を受けた」
さらにイ・スンヨンは「高津さんはコミュニケーション能力が高くて、尊敬できる人だと思った。私はコーチ職を離れて団長と言う立場になったので、これをきっかけにチーム同士で交流出来たらと思う。会いたいと伝えてください」と言ってほほ笑んだ。
月日を経ても薄れない高津の優しさ
一方の高津も後に顔を合わせると、その時々の韓国の公式戦順位や選手の状況をよく知っていた。きっと韓国だけではなく、アメリカ、台湾、BCリーグのこともその後もチェックし、その先々で出会った人たちとも丁寧に接しているのだと感じさせた。
昨年10月、高津は電話でこう尋ねてきた。「明日試合をするトゥサンに僕がやっていた頃にいた人はいますか?」
ヤクルトの2軍は翌日に宮崎でのフェニックスリーグでトゥサンとの対戦を控えていた。トゥサンは韓国シリーズ出場を前にし、主力選手が調整のため宮崎入りしていたのだった。
西都での試合当日の朝、筆者は当時ヒーローズで高津とプレーしたトゥサンの左腕、イ・ヒョンスン(35)を連れて高津のもとを訪れた。イ・ヒョンスンは高津が韓国で初セーブを挙げた時の先発で勝利投手でもある。
「僕もあと2、3年で引退だと思います」と話すイ・ヒョンスンに高津は「体を大事にして、まだまだやってください」と声を掛けた。
イ・ヒョンスンは高津との10年ぶりの再会後、興奮気味にこう話した。
「僕は30歳を過ぎてからしばらく抑え投手をやった。抑えはチームが(試合開始から)2時間50分勝っていても、自分が投げた10分間で負け試合にしてしまうこともある。そんなプレッシャーの中で投げるのは本当にキツかった」
そしてこう続けた。
「シンゴ(高津のこと)はその役割をずっとやっているのに“野球は楽しくやるもの”と言って、すぐに気持ちを切り替えることが出来てすごいと思った」
「僕らしく」、唯一無二の経験を積んだ新監督
高津はBCリーグ・新潟で選手兼監督として指導者生活をスタートさせ、現役引退後はヤクルトで投手コーチ、2軍監督とキャリアを重ねた。
そして1軍を率いることになった高津新監督。高津監督は就任会見後取材に応じ、韓国など様々なリーグでプレーしたことでの価値観や考え方の変化についてこう答えた。
「言葉は悪いんですけど、根性とか忍耐とか昭和のスポ根じゃないですけど、もうちょっと歯を食いしばって頑張る時とかもすごく大事だとプレーヤーの時には感じました。ただそれを選手に押しつけるつもりはないです」
またそれらの経験を指導者についてどう生かすかについては、「たくさん苦労はしましたけど、そこを伝えるつもりはないし、出来れば苦労はしない方がいいと思うのが人間だと思います。ただ自分の心の中にはそれをずっと持って指導はしていきたいです。選手の気持ちはわかってあげたいです」と話した。
「僕らしく、スワローズはスワローズらしく、いい伝統を継承しつつ明るい素晴らしいチームを作っていかなきゃいけない」と会見で言葉に力を込めた高津監督。
唯一無二の経験を重ねた人の「僕らしさ」はきっとどの選手の心にも響くことだろう。
(敬称略)
https://news.yahoo.co.jp/byline/muroimasaya/20191001-00144907/
2019-10-01 08:52:00Z
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