F1第11戦ドイツGP決勝でダニール・クビアトが3位に入り、トロロッソ・ホンダが2018年のタッグ結成以来初となる表彰台を獲得した。トロロッソにとっては2008年イタリアGPでセバスチャン・フェッテルが優勝した時以来2度目の表彰台獲得となった。

クビアトは2016年にマックス・フェルスタッペンとトレードのかたちでレッドブルからトロロッソへ降格となり、精神的な安定性を失って2017年末を待たずして解雇された。

しかし昨年レースを離れてフェラーリの開発ドライバーを経験したことで精神的に成長し、今年は出戻るかたちで再びトロロッソをドライブするチャンスを与えられた。

レース中盤に他車に先駆けてスリックタイヤに交換したことで3位に浮上し、フェッテルに逆転されたものの同様の戦略を採っていたレーシングポイントの1台を抜いて3位でフィニッシュしてみせた。

歓喜の雄叫びを上げ表彰台で涙を流したクビアトは、肩の荷が下りたようだとその心境を語った。「この数年間は僕の人生の中でも本当に信じられないようなタフな数年間だった。僕のF1人生はもう終わったかなと思ったことだってあった。表彰台に立つことなんてなおさらもうないだろうと思っていた。だけどこうして、努力を怠らず、諦めずに挑戦し続ければ不可能なことなんてないんだと証明できた。僕の両肩に重くのしかかっていたこの3年間で経験してきた辛い経験が、今日ようやく打ち砕かれてその鎖から解き放たれたような気分だ。これからはようやく、こういう瞬間に向かって常に安定して戦うことができそうだ」

ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターも、2017年限りでマクラーレンに契約を解消されF1撤退の危機に瀕していたホンダを救ってくれたトロロッソとの成功は、レッドブルとの勝利よりも嬉しいと改めて感謝の言葉を伝えた。「去年トロロッソとタッグを始めて、いろいろ準備をしてレースで学び一緒に成長させてもらったと思いますし、それがなければレッドブルとの関係もなかったと思っています。マックス(・フェルスタッペン)の優勝も嬉しいですが、そういう意味ではそれに全く劣らないか同等以上にトロロッソの表彰台は嬉しかったです」

ホンダの副テクニカルディレクターでありトロロッソ側の運営を統括する本橋正充エンジニアも、表彰台を見上げて目頭が熱くなったと語った。「トロロッソとやってきて本当にやっとこの瞬間が来たという思いもあったし、我々としてもF1に復帰してからなかなか思い通りに行かなくて苦労してきて、感慨深いものがありました。難しいコンディションの中でかなり頻繁に車体やパワーユニットのセッティングを変えるかなり忙しいレースだったんですが、その中で表彰台に立てたのは今までの苦労と今日の苦労が報われたなという気持ちで、本当に嬉しかった。ホンダのマークが2つ表彰台に乗っているというのも感慨深かった。僕は泣かない派なんで泣きはしませんでしたけど、それでもちょっと目頭が熱くなるところはありました。だけどまだここがゴールではなくて選手権を制してからじゃなきゃ泣くわけにはいかないと思って耐えました」

シーズン中盤戦には対他戦闘力を落としていたトロロッソだが、この2戦では状況が上向き、ドイツGPではかなり良好な状態となった。アレクサンダー・アルボンも上位争いに加わり6位フィニッシュを果たした。だからこそ今回の内容を分析し本格的なチームの成長に繋げることが重要だと考え、派手な祝勝会を開いている余裕もなく今週末に行なわれるハンガリーGPまで分析作業に集中するという。(米家峰起通信員)